こんにちは、たれみみです(^^)/
今日はこちらの本を紹介します。
『余命一年、男をかう』吉川トリコ*人生楽しくないと感じるあなたにおすすめ
作品情報
著者:吉川 トリコ
出版社:講談社
発売日:2021年7月16日
本の長さ:322ページ
あらすじ
40歳独身・片倉唯の趣味は、節約とキルト作り。ある日がん検診でかなり進行した子宮がんを宣告される。医師は早めの手術を勧めるが、唯は「これでやっと死ねる」と安堵する。「もう節約なんてせずに自由に暮らせる」・・・そう思って病院の待合室で待っていた唯の目の前に、ピンク頭のスーツを着た男が現れる。「あのさ、おねーさん、いきなりで悪いんだけど、お金持ってない?」その日から、唯とピンク頭の男の不思議な関係が始まる。
『飼う』ではなく『買う』
タイトルが衝撃的で、ずっと気になっていた本作。
なんとなく少女漫画っぽさがあるタイトルだなぁと思っていたら、
20年ほど前に『きみはペット』という少女漫画(ドラマ化もしてる)が流行っていたことを思い出しました。
この漫画は、失恋したキャリアウーマンが、段ボール箱に入れて捨てられた男を見つけ、ペットとして飼うようになるというお話。(字面だけ見るとひどい設定ですね)
なんとなくこの漫画と設定の近しさを感じます。
本作のストーリーは男を『飼う』ではなく男を『買う』でしたが。
余命短い唯が、これまでコツコツ貯めてきたお金で男を『買い』ます。
私はちゃんと観たことありませんが、男女逆転版のプリティ・ウーマンとも言われているそうです。
楽しくなくちゃ、生きてちゃいけないんですか?
唯はiDeCoや積立NISAへの投資を欠かさず、ポイントカード各種を使い分け、毎日三食自炊し、会社まで往復1時間の道のりを歩いて電車代を節約。
その甲斐あって、40歳とは思えない額の資産を持っています。
ですが、別に何か欲しいものがあってお金を貯めているわけではありません。
唯の心の内はこんな感じです。
これから死ぬまで、気が遠くなるほど長い時間を生きなきゃならないのか。
物心ついた時には、そんなふうに思っていた。
この先、何十年――へたしたら百年近く続く長い道のりが目の前に伸びていることに愕然とし、その途方もなさに立ち尽くしていた。
なんの楽しみもなく、ただ生きているだけの人間がいたってよくないですか?
声には出さず、心のなかだけでつぶやいた。人生を楽しまなくちゃってみんな気やすく言うけれど、人生を楽しむのにだってそれ相応のお金がいる。灰色の毎日のなにが悪いのか私にはわからない。
私の人生の目標はただ一つ、だれに頼ることもなく一人で生きていけるだけのお金を稼いで、収支トントンで終えること。
こんな唯の生き方を、「虚しい」「寂しい」と言う人もいるのかもしれません。
でも、人生百年時代の現代、多かれ少なかれ唯のように人生の長さに途方に暮れてしまう人や、人生になんの楽しみもないと感じている人って、男女問わず結構いるんじゃないでしょうか。
私も、少なからず共感できるところがありました。
人が生きる意味を探そうとするのは、意味がないとあまりにも人生は退屈でしんどいことの連続だからだ。だからみんな誰かを愛そうとし、生きるに足るなにかを見つけようとするのだろう。家族とか愛とか友情とか信仰とかいった不確かなものでもないよりましだから。なにかに縋らないと生きていけないから。
『女性は結婚⇒出産⇒育児』とわかりやすいレールがあった一昔前は、人生の生きる意味を考える必要もなかったのかもしれません。
でも今は様々な選択肢があるおかげで、生きる意味を問い直す場面が増えているのかも。
医学の進歩のおかげで、あまりにも長く生きられるようになった人生。
時間をもてあます人も増えているのかもしれません。
何の目的もなく生きるには、退屈です。
自分の余命を自分で決められたらいいのにな・・・と思ったりします。
現代人が抱える様々な生きづらさにも切り込む
本作は「Ⅰ」章が唯目線、「Ⅱ」章がピンク頭の男(瀬名)目線の構成です。
最初唯目線で読んでいると、どうしても瀬名が何を考えているのか掴み切れないんですよね。
ピンク頭で、ホストで、チャラチャラしたキャラなので。
でも瀬名目線の語りがあることで、瀬名の心の内にグッと近づくことができます。
そしてラストの展開は泣けます。
しかも都合よく作られたラストではなく、理想と現実を調和させたような、納得のいくものでした。
人生楽しむことをあきらめていた唯が、瀬名の出現によってどう変化していくのか?
そして唯との出会いで瀬名の人生も変わるのか?が本作の見どころ。
またそれだけでなく、お金の価値、家族の介護、結婚の意味、人生の選択・・・
現代社会の人々が抱える様々な生きづらさに切り込んだ作品でもあると思います。
タイトルから男性には嫌煙されそうですが、男女問わずこの先の人生どう生きようかな?と思っている人には刺さるお話だと思います。
ぜひご一読ください(^^♪
ちなみに講談社から本作のPV(実写版とお絵描き版)が出ています。
かなりクオリティが高いので、こちらもぜひご覧ください。
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