こんにちは、たれみみです(^^)/
今日はこちらの本を紹介します。
『やがて海へと届く』彩瀬まる*大切な人の死と向き合いともに生きていく
作品情報
著者:彩瀬 まる
出版社:講談社
発売日:2016年2月2日
本の長さ:256ページ
あらすじ
真奈の親友・すみれが一人旅の途中で消息を絶った震災から3年。すみれの恋人・遠野はかつて彼女と一緒に暮らした部屋のものを処分して引き払い、彼女を忘れる準備を始める。彼女の死を受け入れられない真奈はそんな遠野が許せず、自分だけはいつまでも彼女を想っていたいと願う。残された人々が、大切な人の不在とどう向き合い生きていくのかを描いた物語。
文章に宿る圧力
彩瀬まるさんは、ずっと気になっていた作家さん。
まずはどれか一冊読みたいと思い、図書館で探したところ、本書に目が止まりました。
惨死を越える力をください。どうかどうか、それで人の魂は砕けないのだと信じさせてくれるものをください。(本文より)
この帯文を見た瞬間、震災で傷ついた方々のたくさんの痛みがドドッと押し寄せてくるのを感じました。
心がえぐられるような、息が止まるような、ものすごい圧力。
そして「これは読まないと・・・・」と思った次第です。
真奈と遠野の対比
震災の日、一人旅に出かけたまま、帰ってこなかったすみれ。
亡くなったと頭ではわかっている一方で
いつか帰ってくるんじゃないか・・・・
と祈るような気持ちで、真奈はすみれの死を受け入れられずにいます。
どれだけ怖かっただろう。
痛かっただろう。
寂しかっただろう。
すみれの苦しさを想像し、悼み続けることが、真奈にとって唯一できること。
自分だけが幸せになるなんて許されていないと考ます。
痛ければ痛いほどいい。苦しければ苦しいほど、死者を近くに感じられる。忘れないでいられる。
対して遠野は現実主義で、すみれとの思い出に折り合いをつけて、前に進もうとします。
もちろん、そこに至るまでの苦しみや葛藤は、並大抵のものではなかったと思います。
だって、すみれと一緒に過ごした部屋で、3年間ずっと彼女が残したものに囲まれて暮らしてきたのだから。
真奈も、遠野も、すみれを大切に想う気持ちは変わりません。
どこまでも歩き続ける
物語は、真奈目線とすみれ目線で交互に進んでいきます。
その、すみれ目線の描写が、すごいのです。
「生」と「死」の間のような世界で、すみれがひたすら、歩き続ける。
震災の日のすみれの様子について、詳しい描写はありません。
でも、歩く様子を通じて、すみれの心情が丁寧に描かれています。
最後のシーンはとても美しかった。
自分もいつかこの世を旅立つとき、こんな風だったらいいなぁ。
大切な人を置き去りにして、自分だけ未来へ踏み出すのは心細くて怖い。
でも、大切な人もきっとどこかで歩いているんだと信じられたら、自分も前を向いて、一緒に歩いて行ける。
そんな風にふわりと教えてくれる、波のようなお話でした。
おすすめです(*^^*)
2022年4月に映画化もされています。
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