『男ともだち』千早茜*”男女間における友情”のひとつのかたちを感じられる一冊

本のはなし

おはようございます。

やっと金曜日。

なんだか今週は1週間が長い気がする・・・。

今日はこちらの本を紹介します。

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『男ともだち』千早茜*”男女間における友情”のひとつのかたちを感じられる一冊

作品情報

著者:千早 茜

出版社:文藝春秋

発売日:2014年5月26日

本の長さ:237ページ

あらすじ

神名葵(29歳)は関係の冷めた恋人と同棲し、愛人の医者との逢引きを重ねている。イラストレーターとして海外の賞を受賞し、仕事は順調に見えたが、描きたいものが描けず悩んでいた。そんな時、大学時代のサークルの先輩・ハセオから久しぶりに電話がかかってくる。男ともだちであり、一番の理解者であるハセオとの居心地の良い関係に救われる神名は、もがきながらも自分なりの生き方を模索していく。

繊細だけど鋭利な筆致

千早さんの作品はエッセイを2冊読みましたが、小説を読むのは今回初めて。

先にエッセイを読んでいたからなのか、京都を歩いたり、中国茶を煎れたり、フルーツを剥いたりするシーンは「あぁ、千早さんだ!」という感じで楽しめました。

神名の生活や考え方にも千早さんっぽさを感じたし、特に仕事に対する葛藤や向き合い方なんかは、もしかしてご自身を重ねて描かれたのかなぁ・・・なんて想像してしまうほど。

神名はイラストレーター、千早さんは作家ですが、「芸術家」「フリーランス」という意味で重なるし、神名の言葉ひとつひとつにすごく魂が宿っているように感じる。

繊細だけど、すごく力強い。

柔らかで華奢な手だけど、爪はものすごく鋭利で引っかかれると血が出る、みたいな。

一人立ちする女性の葛藤

神名には恋人がいて、不倫することに罪悪感もありません。誰とでも寝ちゃいます。

でも、ハセオは「男ともだち」なので身体を重ねるような関係ではありません。

一緒に添い寝はしちゃうけど。

周りの人たちは「特別でいたいなら絶対にセックスしちゃだめ」「幻想を抱いてるだけなんだから早くやっちゃいなさい」と正反対の助言をくれます。

ハセオと一緒にいるのは心地いいけど、このままの関係を続けていていいのか・・・甘えっぱなしでいいのか・・・と神名は悩みます。

「ハセオとの関係どうなるの?」「一歩先に進んじゃうの?」と最後までハラハラしました。

恋人、愛人、男ともだちのところを渡り歩く神名に「ちょっと、しっかり!(笑)」と言いたくなりますが、彼女の不器用さや危なっかしさがありながらも、仕事に対しては一本の芯がピシッと通っている感じは魅力的です。

本作のテーマは「男女間の友情」なのだと思いますが、私がこの本のテーマをつけるなら「一人立ちする女性の葛藤」だと思いました。

神名が仕事や恋愛そして人生について悩む中で、ハセオという味方を心の拠りどころにしながら、自分の力で道を切り開いていくお話と捉えました。

神名にとってハセオは、ありのままを受け入れてくれる、背中を押してくれる存在。

人が生きていくうえで、そういう存在は必要ですよね。

それがたまたま「女」ではなく「男」で、「恋人」ではなく「友達」だっただけ。

そう思うと、2人の関係がそんなに歪には見えなくなりました。

男女間に友情は成立する?

ここで、世間でよくある「男女間に友情は成立するのかどうか問題」について。

私はこの本を読んだうえで、「成立する人もいるし、しない人もいる」というのが今のところの考えです。

両者の言い分は、どちらも正しいのだと思います。

どうがんばっても異性を性的な対象としてしか見れない人もいるでしょうし、同性と全く同じように友達として見れる人もいる。

だから、この議論はこの先もずっと続くんでしょうね・・・・。

私の場合、男ともだちっていたっけ?と考えてみましたが、特に思い当たりませんでした。

これまで親しい男の人っていましたけど、その人たちとの関係性って同級生、同じゼミ、同じサークル、会社の同期や先輩・後輩などなど・・・

「ともだち」というより「仲間」って感じ。

互いに共通のコミュニティに属していて、そこを通じてつながっている。

だからそこに所属しなくなるとその役目を終えて、つながりは途絶える。

相手が女性の場合はもう少し踏み込んで仲良くなったり、所属しなくなった後も会うような関係が続いたりするんですけどね。

私は姉妹で育ったし、女性同士の方が共感しあえることが多くて気楽に感じるタイプの人間なのだと思います。

でもそれは、たまたま私がそんなタイプに育っただけ。

自分の価値観で相手を推し量るのはよくないなぁと、本作を読んで改めて思いました。

でもやっぱり自分の夫に、神名とハセオのような関係性の相手がいたら嫌だなぁ・・・(笑)

自分の恋愛観や友情観、仕事観についても考えさせられる一冊。

おすすめです(*^^*)

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