おはようございます。
新年度が始まり、いつも以上に職場がバタバタしています。
ピリピリをほぐすため、今日も今日とて読書です。
今日はこちらの本を紹介します。
『傑作はまだ』瀬尾まいこ*血のつながりしかない2人は親子になれる?
作品情報
著者:瀬尾 まいこ
出版社:エムオン・エンタテイメント
発売日:2019年3月8日
本の長さ:224ページ
あらすじ
一人暮らしで引きこもりの作家・加賀野のもとに、突然訪ねてきた25歳の息子・智。血はつながっているけれど、とある事情から25年間会っていなかった初対面の二人。智のペースに巻き込まれながら、不思議な共同生活が始まる。世間知らずな父と何を考えているのかわからない息子。二人が織りなす優しい親子小説。
血のつながりしかない親子
本作は本屋大賞を受賞した『そして、バトンは渡された』に続く作品。
『そして、バトンは渡された』では、゛血のつながらない親子”の物語を描かれていましたが、本作は対照的に゛血のつながりしかない親子”の物語です。
「実の父親に言うのはおかしいけど、やっぱりはじめましてで、いいんだよね?」
で始まるこの物語。
生き別れた親子の感動のご対面!
・・・のはずですが、互いに感極まるわけでも、父が息子に謝り倒すわけでもなく、息子が父に恨みや憎しみをぶつけるわけでもなく・・・
加賀野は智を゛猫が迷い込んできたよう”と称しています。
実の息子に対してそりゃないでしょ(笑)
そう、加賀野は父としての自覚がまったくない。
25年間一度も会っていないと、そんなものなのでしょうか。
・・・いや、たぶん加賀野が特殊なんでしょう。
加賀野は無自覚ですが、人の気持ちを想像すること、汲み取ることがものすごく苦手。
だからこそ、25年間息子に会いに行こうとしなかったわけです。
それを悪かったとも思っていない。
今更目の前に息子が現れても、どうしたらいいのかわからない、という感じ。
無責任な加賀野に腹を立てたくなるところですが、不思議と憎めないんですよね。
それが瀬尾マジックです。
やさしいご近所さん
この物語、ご近所さんがいい味出してます。
みんなやさしい。
゛血はつながってるけど情がない親子”とは対照的に゛血のつながりはないけど情が深いご近所さん”の存在が、この物語のキーになっている気がします。
智はご近所付き合いがとっても上手。
表裏も分け隔てもない健やかさで、人の懐に入るのが得意。
すぐに加賀野のご近所さんとも仲良くなってしまいます。
対して加賀野は、煩わしい人間関係をいっさい遮断。
そのせいで浦島太郎状態です。
そんな加賀野が智のペースに巻き込まれながら、少しずつ変化していく様が面白いです。
人と過ごすことで生まれる彩
心に響いた文章があります。
誰かと近づけば、傷つくことも傷つけてしまうこともある。自分のペース通りに進めないし、何気ない相手のふるまいに不安に駆られることもある。自分がどう思われているかが気にかかり、それと同時に誰も俺なんか見ていないんだと自意識の強さに恥ずかしくなる。自分の価値がどれくらいなのか無意味なことばかりうかがっては、優越感や劣等感に襲われる。
一人で過ごしていれば、そういう醜いものすべてを切り捨てられる。ストレスも嫌らしい感情も生まれない心は、きれいで穏やかだ。しかし、こんなふうにうれしい気持ちになることは、一人では起こらない。
これは人間関係の真意だなと思いました。
なぜ人は、煩わしさを感じながらも人付き合いをするのか。
大変なことも多いのに結婚したり子供を産んだりするのか。
誰かと時間や経験を共にすることは、良くも悪くも感情の相互作用がある。
喜び、怒り、悲しみ、楽しみ・・・
感情の起伏が、人生に彩を与えてくれているのかもしれません。
さてさて、加賀野と智は無事、親子になれたのでしょうか?
ぜひ、見届けてみてください(*^^*)
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