以前に、わたなべ夫婦のゆみさんがStand.fmやブログで紹介されていたこの作品。
ずっと気になっていたものの「美術の知識全然ないし世界観に入り込むの難しいかな…」と手を伸ばせずにいました。
ですが、Kindle unlimitedで読み放題だったこともあり読むことができました!
作品情報と感想をまとめてみます。
『楽園のカンヴァス』原田マハ*情熱を持って生きる姿は美しい
作品情報
著者:原田 マハ
出版社:新潮社
発行年:2012年1月20日
受賞歴:第25回山本五郎賞/第147回直木賞/第10回本屋大賞3位
あらすじ
ニューヨーク近代美術館(MoMA)のアシスタント・キュレーター《ティム・ブラウン》は、アンリ・ルソーの絵画の鑑定依頼を受け、バーゼルへと招かれました。
しかし、そこに招かれていたのは彼だけでなくソルボンヌ大学の博士号を若くして取得したルソー研究者《早川織絵》もいました。
そして依頼人の《コンラート・バイラー》は、ルソーの「夢」に酷似した絵画の真贋を見極めた勝者に、その絵画の取り扱い権利を譲渡するというのです。
ルソーを愛してやまないティムと織絵は、7日という短い調査期間でその絵画の隠された謎に迫っていく―。
静かな世界観から一気に引き込まれる
全体を通して、美術館で作品を鑑賞している時のような静かな雰囲気に包まれている感じがして、すごく好きでした。
ですが、その静かな雰囲気の中でも、ティムと織絵がルソーにかける想いはとても熱く、物語が進むにつれて躍動感が出てきます。
「夢」に酷似したこの絵に、一体どんな真実が隠されているのか?
限られた時間の中で2人は真相にたどり着けるのか?
と一気に引き込まれてしまいました。
ライバルとして、ルソーを愛する同志として、調査をともにするティムと織絵ですが、物語が進むにつれ、少しずつ関係が変化していく様も、美しいです。
美術に詳しくなくても大丈夫!
この作品は、史実とフィクションが巧みに織り込まれたストーリーになっていて、絵画に関する細やかな知識も随所に散りばめられています。
まさに、元キュレーターの原田マハさんだからこそ描けた物語。
私は美術に詳しくないので、どこまでが史実でどこからフィクションなのか、正直全然わからなかったのですが、美術の知識がない素人でも、問題なく楽しめました。
晩年も華やかな脚光を浴びることはなく、小さく暮らしながらコツコツと絵を描き続けたルソー。そこには凄まじい情熱を感じます。
亡き後もこれだけ長くたくさんの人々を魅了してきた彼の作品、ぜひ本物を見てみたいものです。
織絵が勤務している大原美術館(岡山県)にも行ってみたい!
アートと小説とは「永遠に生き延びる方法」
この物語の中で「永遠に生きること」を決意する人物が出てきます。
私はその場面にすごく心を打たれました。
原田マハさんは、楽天ブックスの著者インタビューで、この作品についてこう語られています。
(原田さんにとってアートと小説、とは?)
―――「永遠を生き延びる方法」でしょうか。私が永遠に生きる、ということではなく、小説に登場する人物に永遠の命を与える。そういう意味ではアートと小説って似てると思うんです。美術品も、それを守り伝えようとする人がいる限り、永遠を生きる。アートに長く携わってきた中で、そういう永続性への憧れは強く持っていました。だから、この小説も叶うことならば、源氏物語が今に伝わるように、長く読み継がれていってほしいですね。
作り手が絵や文章を通じて描いた人物に命が宿り、永遠に生き続ける・・・
なんて素敵なのでしょうか(*´ω`*)
改めて、アートや小説などの作品が持つ力ってすごい!と思いました。
たとえ何百年、何千年の時を経たとしても、作品を通じて、その人が生きていた時代に会いに行くことができる。
そして今この瞬間の出来事も、未来永劫に語り継ぐことができる。
もっともっと、いろんな時代の本を読んでいきたいな~と思う今日この頃です。
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