『汝、星のごとく』凪良ゆう*不自由さと孤独を抱える二人が自らの人生を懸命に泳ぐ愛の物語

本のはなし

こんにちは、たれみみです(^^)/

今日はこちらの本を紹介します。

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『汝、星のごとく』凪良ゆう*不自由さと孤独を抱える二人が自らの人生を懸命に泳ぐ愛の物語

作品情報

著者:凪良 ゆう

出版社:講談社

発売日:2022年8月4日

本の長さ:352ページ

あらすじ

ーーわたしは愛する男のために人生を誤りたい。

風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。
生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。

ーーまともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。

(出版社より引用)

ただの純愛物語ではない

凪良ゆうさんは2020年に『流浪の月』で本屋大賞を受賞されました。

そして2023年に本作『汝、星のごとく』で二度目の本屋大賞を受賞されています。

わずか3年という短期間での再受賞は、本屋大賞始まって以来の快挙だそう。

2023年4月時点で発行部数40万部を突破している大人気作です。

たくさんの方々がおすすめ本として紹介されているのでずっと気になる作品ではあったのですが、大人気過ぎて図書館では予約でいっぱい。

一体いつ読めるのか・・・と途方に暮れていると、今回Audibleで聴くことができました。

ふむふむ。なるほど、これは大人気なわけだ。

このお話は、ただの純愛物語ではない。

毒親、ヤングケアラー、島社会の閉塞感、夢と挫折、職場の男女不平等、女性の生き方・・・・

人生における様々なテーマを孕んだストーリーに圧倒されました。

自分の人生を生きることを、他の誰かに許されたいの?

暁海と櫂の親は、世間で言う毒親です。

もう、こちらまで腹が立ってくるほど自己中心的な、未熟な人たち。

でも二人はそんな親から逃れられない。

それは親を想う優しさ、というよりは親子という呪縛のようなもの。

呪縛によって、夢や希望を諦めざるを得なくなり、世界がどんどん閉ざされていく・・・。

歯がゆくて、仕方ありませんでした。

しかしそんな二人にも、道を示してくれる大人が現れます。

「自分の人生を生きることを、他の誰かに許されたいの?誰かに遠慮して大事なことを諦めたら、あとで後悔するかもしれないわよ。そのとき、その誰かのせいにしてしまうかもしれない。でもわたしの経験からすると、誰のせいにしても納得できないし救われないの。誰もあなたの人生の責任を取ってくれない」

この言葉には、読んでいる自分自身もハッとさせられました。

私たちは、誰かに許しを請うために、生きているんじゃない。

自ら積極的に選んだ人生であっても、何かを諦めて親に選ばされた人生であっても、最後は自分で責任を取るしかない。

人生の道しるべになるような言葉だなと思いました。

誰かが決めた「正しさ」は重要じゃない

高校時代を共に過ごした二人ですが、年を重ねるごとに少しずつ歯車が噛み合わなくなっていきます。

それが切なく、危ない橋を渡っているように見えてハラハラする場面もありました。

しかしそれはどちらが正しいとか間違っているとかではなく、それぞれが必死に生きているが故の必然なことだったように感じる。

「いい大人と正しい大人もイコールでは結べない」

と作中でも出てくるように、本作にはあまり「正しい大人」は登場しません。

人が生きる上で「正しさ」を大事にすべき場面はあるかもしれませんが、「正しさ」ばかり重んじていては、自分の大切なものを見失ってしまう。

そればかりか、大切な人も守れないかもしれない。

きっと、「自分にとって何が大切か」「いかにして生きるか」を考えた時に、誰かが決めた「正しさ」なんてほとんど重要じゃない。

周りからどう見られようと、自分が選んだ道を正解にしていくしかない。

二人の人生を見て、そう感じました。

女性が経済的に自立するということ

本作は恋愛小説というジャンルになるのだと思います。

ですが私はそれ以上に、暁美やその母親、父親の不倫相手(瞳子)の生き方を通じて「女性の生き方」を考えさせられました。

暁美の母親は専業主婦、父親の不倫相手は手に職を持っている。

不倫をされても「夫を一番理解し自由に泳がせる妻の余裕」を保つことでしか自分を保てない母親は、精神的に脆く、どんどん壊れていってしまう。

対して、暁美の家庭を壊した張本人である不倫相手は、誰に依存することもなく、自立した強さがある。

どちらが正しいのかと問われれば、たぶんどちらも正しくはないのでしょうが・・・

私は瞳子に惹かれましたね。

とある人物が暁美に向けてかけた言葉がこちら。

「パートナーがいてもいなくても、子どもがいてもいなくても、自分の足で立てること。 それは自分を守るためでもあり、自分の弱さを誰かに肩代わりさせないということでもある。 人は群れで生きる動物だけど、助け合いと依存は違うから」

著者はVERYのインタビューで本作についてこのように語られています。

今回書いたのは恋愛小説ですが、全編を通して、女性が結婚しているかどうかに関わらず自分で食べていける仕事を持つことは大事だということも伝えたいと思いました。今の結婚生活が幸せでもそうでなくても経済力はあったほうがいい。その上で結婚生活が幸せなものなら何よりだし、もし不仲になったとしても、経済的な問題を考慮することなく自分の選択ができます。お金がないからこの人とは結婚できないとか、子どもにお金の苦労をさせないために、嫌でも結婚生活を続けるなど、関係がお金に縛られることは本当に多いじゃないですか。経済的な問題がなければシンプルに、愛しているからしんどくてもそばにいるという選択もできるだろうし、やっぱり無理だと思うときに別れる決断もできると思います。

きっと暁美の母親世代では、まだまだ女性が長く働き続ける環境が整っていなかった背景もあるのでしょう。

生きていくには専業主婦を選び、夫の経済力に頼るほかなかった。

ですが今は一昔前と比べれば、確実に女性にも様々な道が開かれている。

もちろん専業主婦を非難するつもりはないですが、常に自分の選択肢を広く確保しておくためにも、女性が働き経済力を備えておくことは大切だと感じます。

続編『星を編む』が発売開始!

なんと、本作の続編『星を編む』が2023年11月8日より発売開始しております。

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花火のように煌めいて、
届かぬ星を見上げて、
海のように見守って、
いつでもそこには愛があった。

ああ、そうか。
わたしたちは幸せだった
のかもしれないね。

『汝、星のごとく』で語りきれなかった愛の物語
「春に翔ぶ」–瀬戸内の島で出会った櫂と暁海。二人を支える教師・北原が秘めた過去。彼が病院で話しかけられた教え子の菜々が抱えていた問題とは?
「星を編む」–才能という名の星を輝かせるために、魂を燃やす編集者たちの物語。漫画原作者・作家となった櫂を担当した編集者二人が繋いだもの。
「波を渡る」–花火のように煌めく時間を経て、愛の果てにも暁海の人生は続いていく。『汝、星のごとく』の先に描かれる、繋がる未来と新たな愛の形。

(出版社より)

こちらもすごく面白そう!

きっと大人気で予約殺到でしょうから、図書館愛好家の私はいつ読めるかわかりませんが、ぜひ読みたいです(*^^*)

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