おはようございます(^^)/
昨日は第168回芥川賞・直木賞の贈呈式でしたね。
受賞された皆様、おめでとうございます!
今日ご紹介するのは、受賞者のお一人、千早茜さんの本です。
『しつこく わるい食べもの』千早茜*自由を味わい尽くしたくなる一冊
作品情報
著者:千早 茜
発行年:2021年2月28日
出版社:株式会社 ホーム社
千早さんのエッセイ「わるたべ」第二弾です。
千早節炸裂
本文を引用した帯がもうすでに素敵。
正義のヒーローの食卓より、悪者の食卓のほうが格段に魅惑的だ。ヒーローはプロテインなんかを摂取して健康に気をつかっていそうだが、悪者からは「俺はどこにいようと誰がなんと言おうと俺の好きなものを食うぜ」という気概を感じる。とても自由だ。
欲望を追い求めた先にはきっと、艶やかな地獄がある。その危険さと甘やかさを悪い奴らは味わっている。(「悪党飯」より)
千早さん、「わるたべ」第一弾を出してから「小説のイメージと違った」と言われることが増えたそうです。
それに憤慨されつつも、”「イメージと違う」は彩り”と語られています。
“イメージ通りの人生はどこか見たような景色を見続けるようなもので、きっとつまらない気がする”と。
確かに、切っても切っても金太郎飴みたいな同じ毎日の繰り返しだと、つまらないですよね。
今作も前作同様、声を出して笑ってしまうほどおもしろかったです。
エッセイを二度読み返してしまったのは「わるたべ」シリーズが初めて。
これきっかけに千早さんを好きになってTwitterをちょこちょこ覗いております|´-`)♡
なんでこんなに楽しめたのかと考えたところ、私自身食べることが好きなので読んでわくわくした、というのもあるのですが、おそらく千早さんの「自由さ」に惹かれたのだと思います。
自由に食べる権利
千早さんって自分の欲求や、快、不快、好き、嫌い、不安、恐怖とかいう感覚をとても鋭くキャッチされる方なんだと感じます。
食べることには正直でいたかった。自立した大人として生きているのだから、食べることくらい自由にしたかったし、その意志が肯定される世の中であれ、と思ってはじめた連載だった。(「しつこくつきまとうもの」より)
周りに左右されずに、自分の感覚を大事にして自由に選択したいという意志を強く感じます。
いろんなエピソードが語られていましたが、例えば以下。
・人から「ね、おいしいでしょう」と言われたとたんにおいしくなくなる
・味噌汁だけは誰かが作るより、自分の欲望のままに自由に作るほうが絶対にうまい
・「他人が和えたもの」は一体何が混ぜられているのかわからなくて恐怖
・子どもの頃、アメリカンスクールに進級した後も幼稚園の先生がくれるキャンディが食べたくて、放課後もらいに走っていた
特に子どもの頃のエピソードは、黒柳徹子さんの自伝小説『トットちゃん』を彷彿とさせます。
前作を初めて読みながら「なんかトットちゃんに近いものを感じるなぁ・・・」と思っていたら、実際「海のものと山のもの」のお話で、千早さん自身子どもの頃トットちゃんに共感し救われたと語られていました。
私の中では、トットちゃんが天真爛漫で自由な女の子のイメージだとしたら、千早さんは鋭い牙で好きなもの好きなだけをもっさもっさ食べる「黒トットちゃん」のイメージ。(すいません・・・)
そう思うと北澤平祐さんのかわいい狼のイラストは本当にイメージにぴったり。
自分の感覚をとことん大事にしていて、それを的確に言語化して伝えられる。貫ける。周りに流されない。
そんな千早さんの生き方に、私は憧れるのだと思います。
私はどちらかというと真逆で、子どものころは大人に敷かれたレールの上を歩くことに何の疑問も持たなかったし、安心すら覚えていました。
「自由にやっていいよ」と言われると何をしていいかわからない。
周りにどう見られるのかを気にして行動することが多かったです。
今もその癖は抜けていません。
だから感情の赴くままに食べる千早さんにはすごく惹かれるし、とても楽しく読めたんだと思います。
自分にとってなくてはならないもの
本作が執筆された頃はちょうど新型コロナウイルスが流行り出し、初めて緊急事態宣言が出た時期でした。
あの頃は近所のドラッグストアやスーパーでトイレットペーパーの買い占めが起きましたよね。
不要不急の外出自粛要請が出始め、デパートが休業するのも時間の問題と悟った千早さん。
そんな千早さんが買いに走ったのは、なんと一軍の嗜好品(大好きな紅茶やお菓子)の数々。
生命維持に必要な食糧だけでは私の魂は死ぬ。魂が死んでは執筆はできない。(「告白します」より)
このエピソード、大好きです(笑)
最近の私は、以前よりも健康や節約にアンテナが張っているのですが、どうしても嗜好品って”わるもの”にされがち。
ときどき、甘いものや揚げものや乳製品が大好きな自分に対して「なんでこんな嗜好に育ってしまったの・・・」と悔やむことがあります。
でも千早さんの言葉で安心したというか、自分を肯定してもらっているような気持ちになりました。
これからも自分の好きなもの、自分にとってなくてはならないものたちを、堂々と大事にしていこう。(もちろん身体と財布に支障がない範囲で・・・)
そんな、もっともっと貪欲に、自由を味わい尽くしたくなる一冊。おすすめです(^^♪
前作のわるたべ作品紹介はこちらから。
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