こんにちは。
今日は1日中雨で気分は晴れませんが、夫の出張(横浜)土産を食べて気分を上げております。
今日は最近読んだ小説をご紹介します。
52ヘルツのクジラたち』町田そのこ*今はどんなに辛くても、あなたの声を聴いてくれる人が必ずいる。
作品情報
著者:町田 そのこ
出版社:中央公論新社
出版年:2020年4月25日
あらすじ
家族に自分の人生を搾取されてきた女性・貴瑚は、人生をやり直すために大分の海の近くにある田舎街に引っ越してきました。
そこで、母に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年に出会います。
自分の辛さと重ねながら少年に助けの手を差し出そうとする貴瑚。
孤独な人生を背負った二人が心を通わせることで生まれた、優しい光と再生の物語です。
世界で最も孤独なクジラ
こちらの作品は2021年本屋大賞を受賞しており、大人気の作品。
図書館では常に貸し出し中で、待ちに待ってようやく手元にやってきました。
町田そのこさんは『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』と『コンビニ兄弟』を読んだことがあり、好きな作家さんです。
書き出しの一文でグッと物語に引き込むのがうまい印象。
こちらの作品も例にもれず、書き出しの一文が秀逸でした。
「おやおや、一体どんなお話が始るの?」と引き込まれました。
表題の『52ヘルツのクジラ』についてですが、一般的なクジラは10~39ヘルツの周波数で鳴くのに対し、世界で一頭だけ52ヘルツという高さで鳴くクジラがいるそうです。
あまりに高音なため、どれだけ声をあげても、他のクジラたちにその声は聞こえない。
世界で最も孤独だといわれているクジラだそうです。
なんだかそのエピソードを聞くだけで切なくなりますね。
この物語では52ヘルツのくじら”たち”というのがミソです。
苦しみを抱えるすべての人へ
この物語の全体の雰囲気としては、決して明るくはありません。
貴瑚と少年の置かれてきた境遇は凄まじく苦しいですし、その辛さを思うだけで涙が出てきます。
話の展開の中で、何度も何度も、心揺さぶられます。
ですがその中でも、二人を救い出そうとする人物たちの優しさや、少年の少しずつの変化、二人の心の通い合いは温かく、そしてラストは一筋の光が見えるような、希望をもって読み終えることができました。
著者が、苦しみを抱えるすべての人に届けたい一心で書き上げたことを強く感じ、私自身もすべての人に届いてほしいと祈るような気持ちになりました。
聞こえない声に耳を澄ませてみる
人は、人と交わることで傷つきもするし、苦しみも絶望も味わう。
でもそこから救い出してくれるのはやはり人との交わり。
それによって癒されもするし、生きる希望も感じられる。
辛さと戦うのは自分自身だけれど、誰かがそばにいてくれることが立ち向かう勇気になる。
人は、ひとりでは、そして自分のためだけには頑張れないんだと思います。
だから人と寄り添い、人を育む道を選ぶのでしょう。
わたしは、どうだろうか。
誰かの声を聴き、誰かに声を届けることができているだろうか。
きっと今この瞬間も、孤独と戦う人々が世界中に数多くいる。
そのことに思いを馳せながら、たとえ周波数の違う声であったとしても、耳を傾けられる人でありたい。
まずは、自分自身の声に耳を澄ませてみよう。
そして、隣にいる大切な人の声に耳を澄ませる努力をしよう。
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