おはようございます。
今日は朝からザーザーと雨が降っています。
買い物に行かないといけないのだけど・・・
雨が弱まるのを待っています。
そんな今日ご紹介するのはこちらの本。
『水を縫う』寺地はるな*”普通の生き方”に生きづらさを感じている人に読んでほしい家族小説
作品情報
著者:寺地 はるな
発行年:2020年5月30日
出版社:株式会社集英社
あらすじ
”男なのに”刺繡が好きな高校1年生・清澄は、なんとなくクラスから浮いている。
結婚を間近に控えた姉・水青は、”女なのに”かわいいものが苦手。
母・さつ子は、仕事に奔走しながら、離婚した夫のようになってほしくないと願い、いつも子供たちの失敗を先回りして回避しようとする。
そんなさつ子に「子どもが失敗する権利」を諭す祖母・文枝も、”いいお嫁さん”になるよう育てられ、窮屈な思いをしてきた。
さつ子の元夫・全やその友人の黒田もまた、”普通”を押し付けられることに生きづらさを感じていた。
清澄は姉のためにウエディングドレスを手作りすることを宣言するが、果たして水青の要望通りのドレスは無事に完成するのか。
世の中の”普通”を踏み越えていく、6人の家族の物語。
”普通”から自由に
「ジェンダーレスな社会な社会を目指して」等とよく耳にするようになった近年、「男らしい」「女らしい」という言葉って以前より聞かなくなったなと思います。
一昔前は好きな異性のタイプに「男らしい人」「女らしい人」と言ってる人よくいましたよね。今もいるのかな・・・。
男はズボンで女はスカートとか、男の子は戦隊ものが好きで女の子は人形で遊ぶとか。
私の時代はまだ、ランドセルは男の子が黒、女の子が赤でした。
今はランドセルもかなりカラフルで、好きな色を自由に選べますよね。
女性もパンツスタイルを楽しむし、男性もお化粧や脱毛をする時代。
働き方もかなり自由になってきているし、結婚をしたり子どもを産んだりすることは個人の自由なのだという風潮も、数年前より確実に広がってきていると感じます。
どんどんと、生きやすい時代になってきている。
今そういう風になってきているのって、”普通”とか”当たり前”を窮屈に感じた人たちが、きちんと声を上げてきてくれたから。感謝です。
でもやっぱりまだ発展途上なので、一昔前の”普通”に縛られている人もたくさんいる。
「子どもを自分の思い通りにしたいとか、そんなことは考えてへん。いくらなんでも」
なにも、東大に入れ、とか、オリンピックに出ろ、とか言っているわけではない。ほどよい進学と就職と結婚をしてほしい、ひとりで生きていかずに済むように、家族をつくってほしい、と思っているだけだ。
当然のようにそう言えてしまうさつ子。
それによって子どもをがんじがらめにしてしまう。
「みんなと同じように平凡な生活をして幸せになってほしい」と願う親心。
でもその「平凡」というのは幻想なんですよね。
「できれば失敗してほしくない」「傷ついてほしくない」
そんなさつ子の気持ちに共感する方はたくさんいるだろうなぁ。
やりたいことは何でも、何歳からでも
文枝のように、育った環境で当たり前のように教えられたことや言われて傷ついた言葉が、自分自身を長年苦しめている場合も多いと思います。
そういう記憶って、なかなか上書きするのは難しい。
何か新しいことをしようとするとき、知らないうちにそれが足枷になっている。
私の中にも知らない間に自分を抑圧している部分ってあるのかも。
よくよく見つめ直さないと気づかないくらいに追いやられている想いや願い。
いつの間にかあきらめてしまったことたち。
でも文枝のように何十年もかけて、ふとしたきっかけで、吹っ切れるときもやってくるのかもしれない。
新しいことにチャレンジする74歳の文枝。
その手の甲には、年輪のように刻まれたいくつもの皺。
とても美しい描写だなと思いました。
私も、自分で自分をあきらめたくない。
やりたいと思ったことは、何でも、何歳からでも、やっていこう。
流れる水は淀まない
最終章の章題でもある「流れる水は淀まない」。
最後の最後で水青と清澄の名前の由来が語られるシーンが心にグッときます。
「流れる水であってほしい」という父・全の願い。
そこにはどんな願いが込められているのか。
とても真逆な考え方のさつ子と全。
真逆すぎて上手くいかず離婚してしまったけれど、きっとどちらの考え方も愛し方も間違いではないし、2人の生きざまが重なりあって、素直で優しい水青と清澄が育ったんだろうなぁ。
とてもあたたかな、のびやかな気持ちにさせてもらいました。
ブルーにきらめく川の流れの書影にピッタリの爽やかな読後感。
”普通”や”当たり前”の生き方に生きづらさを感じている人や、家族小説を読みたい人におすすめです(*^^*)
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